2024.6.21 基礎知識

国際物流管理士とは?国内で唯一の国際物流に関する資格について解説

この記事では、国際物流管理士という資格について詳しく解説しています。国際物流管理士がどのような資格で、どのような役割を果たすのか、その取得方法や具体的なメリットについて知ることができます。また、国際物流管理士の将来的な展望についても触れていますので、国際物流業界でのキャリアアップやスキル向上を目指す方には必見の内容です。この記事を読むことで、国際物流管理士の全貌が明らかになり、将来のキャリア形成に役立つ貴重な情報が得られます。

1. 国際物流管理士とは

1.1 国際物流管理士とは

1.1.1 資格の定義と役割

国際物流管理士は、国際物流に関する専門的な知識とスキルを持つ人材を養成するための資格です。この資格を取得することで、輸出入業務、通関手続き、運輸の管理など、物流の様々な分野での専門的な役割を担います。また、国際物流の複雑さや多様性に対応できる実力を証明するため、企業にとって重要な人材となります。例えば、強化された在庫管理や迅速な通関手続きを行うことで、物流プロセス全体を効率的に管理し、コスト効果を最大化する能力が身に付きます。

1.1.2 国際物流における重要性

グローバル経済の発展に伴い、物流は単なる貨物の輸送手段としてだけでなく、企業の競争力を高めるための戦略的なツールと見なされています。そのため、国際物流管理士の資格を持つ専門家は、企業にとって貴重な存在です。この資格を取得することで、物流全体を見渡し、輸送コストの削減やリードタイムの短縮など、企業運営の効率化を実現するスキルが身に付きます。これにより企業は、競争力を大幅に向上させることが可能となります。

1.2 資格の歴史と背景

1.2.1 設立の経緯

国際物流管理士資格は、国際物流が急速に進展する中で、その分野で専門的な知識を持つ人材を育成する必要性が高まったことから設立されました。この背景には、国際物流の複雑化や競争の激化があり、これに対応できるプロフェッショナルが求められたのです。例えば、近年ではアジア圏を中心とした国際貿易の増加に伴い、効率的な物流体制を整えることが急務となっています。

1.2.2 過去の事例と成功例

国際物流管理士資格を取得した多くの専門家が、企業の国際物流戦略において重要な役割を果たしてきました。例えば、ある物流会社では、国際物流管理士の資格を持つ社員が海外の新しい物流拠点の開設を成功させ、その結果、企業全体の物流コストを大幅に削減しました。また、別のケースでは、通関手続きを迅速化するためのシステムを導入し、5日間かかっていた手続きが2日で完了するようになりました。こうした事例が示すように、国際物流管理士の活躍が業績向上に寄与しています。

2. 国際物流管理士の資格取得方法

2.1 取得までのステップ

2.1.1 必要な条件

国際物流管理士の資格を取得するためには、以下の必要条件を満たす必要があります。具体的には、

  • 国際物流関連業務にて2年程度の経験が求められます。これは、国際物流業務に従事しているプロフェッショナルとしての基礎的なスキルと知識を持っていることを証明するためです。
  • 物流に関する基礎知識を有していることが必要です。具体的には、国際物流の基本概念や、関連する法律・規制に関する理解が必要です。
  • 受験料を支払うことが前提となります。受験にかかる費用については、後述する詳細をご参照ください。

2.1.2 カリキュラム

国際物流管理士のカリキュラムは以下です。

単元カリキュラム
第1単元:グローバルロジスティクスのアウトラインを捉える・国際物流とロジスティクス
・グループ討議(国際物流の現状・自社の課題認識と解決の考え方)
・キックオフミーティング(オンライン交流会)
第2単元:輸出入業務の流れと貿易実務に必要な知識を学ぶ・インコタームズ、ウィーン売買条約
・貿易売買契約と各種決済方法、外国為替とリスクヘッジ
・FTAとEPA、原産地規則、AEO制度
・輸出入における通関業務と保税手続き、通関システム
・貿易売買契約と各種決済手法、外国為替とリスクヘッジ、国際ファイナンス
・海外コンプライアンス、貿易取引のデジタル化(FinTech)
・グローバル生産を支えるロジスティクス
第3単元:国際物流の根幹を成す海上輸送を理解する・国際海上貨物輸送概論
・海上個品運送契約/船荷証券/Sea Waybill/複合運送証券
・海上コンテナ輸送の仕組み、技術
・海上運送における特殊貨物(危険物)概論
・フォワーダーとNVOCC、国際複合輸送
・フォワーダーのデジタル化動向
第4単元:航空輸送の仕組みとポイントを理解する・航空産業概論、航空貨物輸送概論 航空協定、航空運送約款と航空運送状、航空貨物運賃
物流施設見学:国際物流の最前線を、見学して感じる・成田空港 貨物ハンドリング施設
第5単元:グローバルサプライチェーンの可視化と最適化の手法を学ぶ・国際物流におけるコストとKPIの算定と既存業務プロセスの見直し
・サプライチェーン最適化のためのシステム構築
・グローバルサプライチェーンの各種改善手法
・3PL概論
・国際物流における3PLの導入事例
・国際物流における3PLの実践事例
・グループ討議
第6単元:国際物流のリスクを理解し、対処する方策を学ぶ・リスクマネジメント・BCP概論
・国際物流におけるリスクマネジメント事情、リスクマネジメントワークショップ
・国際物流におけるロスプリベンション
・貿易貨物保険とクレーム(保険金請求)の実務
第7単元:海外の最新物流環境を学ぶ・インドの最新物流事情
・欧州の最新物流事情
・米国の最新物流事情
・ASEANの最新物流事情
・中国の最新物流事情
・中国の国内およびASEANへの物流戦略
第8単元:グローバル企業が直面した課題と解決方法を学ぶ・SCMの視点から取り組む海外現地における改善活動
・海外駐在における駐在員の役割と心得
・グローバルサプライチェンとテクノロジートレンド
・駐在経験者による座談会
・荷主企業のグローバル物流体制の構築(事例)
・アパレル産業のグローバル・サプライチェーン構築における物流サステナビリティへの要請
・自動車のグローバルサプライチェーン
第9単元:あるべき姿に到達するための実践力を身につける・ケーススタディ
「グローバルロジスティクス改革」

2.1.3 終了基準と合格基準

終了基準と合格基準は以下になります。

【修了基準】
・14日以上出席すること
・該当する単元で出題されるレポート試験を全て受験していること
・客観試験を受験していること
・第9単元「あるべき姿に到達するための実践力を身につける」に2日間出席すること

【合格基準】
① レポート試験(5回):各100点中70点以上
②客観試験(1回):100点中70点以上
③欠席減点:1日欠席で1点減点、半日欠席で0.5点減点
総合平均点{(①+②)÷6}-③:100点中70点以上

2.2 費用と期間

2.2.1 受験料とその他の費用

国際物流管理士の資格を取得するには、以下の費用がかかります。

区分金額
協会会員受講料440,000円(税込)/1名
会員外受講料550,000円(税込)/1名

2.2.2 資格取得までの期間

講座の終了までには約6ヶ月のカリキュラムを受講する必要があります。試験に合格した後、資格証明書が発行されるまでには約1ヶ月かかることがあります。

3. 国際物流管理士のメリット

3.1 キャリアへの影響

3.1.1 就職・転職における有利な点

国際物流管理士の資格を持っていることで、物流業界での就職や転職において非常に有利になります。 多くの企業が国際物流の専門知識を持った人材を求めているため、この資格はあなたの履歴書に強力なアピールポイントとなります。

特に、日本国内のみならず、海外展開を進めている企業や外資系企業では、国際物流管理士の資格が高く評価されます。 これにより、企業が求める即戦力として採用される確率が高まるでしょう。

3.1.2 キャリアアップの可能性

この資格を取得することで、キャリアパスにおける選択肢が広がります。 まず、国際物流に関する知識とスキルを体系的に学ぶことで、自身の専門性を高めることができます。これにより、現在のポジションからの昇進や新たな役職へのステップアップが期待できます。

また、国際物流管理士の資格は、教育機関やセミナーでの講師としての道も開けるため、将来的に独立やフリーランスとして働く際にも有利です。

3.2 スキルの向上

3.2.1 専門知識の習得

国際物流管理士の資格を取得する過程で、物流に関する幅広い専門知識を体系的に学ぶことができます。これには、貿易実務、国際法規、インコタームズ、関税法などが含まれます。

この知識は、実務においても非常に役立つものであり、物流の計画から実行、管理までを効率的に行うための基盤となります。さらに、物流の最新動向や技術についても理解を深めることができるので、常に最新のトレンドに対応することが可能です。

3.2.2 実務での応用力向上

国際物流管理士の資格取得によって得られるスキルは、実務でもすぐに応用できます。例えば、輸出入業務の効率化やトラブルの未然防止、コスト削減策の提案など、多岐にわたります。

実際に、資格保持者は既存のプロセス改善や新規プロジェクトの立ち上げなどで高く評価されることが多いです。さらに、交渉力やリーダーシップスキルも向上するため、チームの中心人物としての役割も果たすことができます。

メリット概要
就職・転職における有利な点国際物流の専門知識が評価され、求人市場での競争力が高まる。
キャリアアップの可能性昇進や新しい役職への道が広がり、講師としての活動も可能。
専門知識の習得貿易実務や国際法規など、物流に関する幅広い知識を体系的に学べる。
実務での応用力向上輸出入業務の効率化やコスト削減策の提案など、実務での特段メリット。

4. 国際物流管理士の将来的な展望

4.1 未来の需要と市場動向

4.1.1 グローバル化の影響

国際物流管理士はグローバル化の進展に伴い、その重要性がさらに高まっています。欧米諸国だけでなく、新興市場を含めた広範囲な地理的エリアで需要が拡大しており、企業は効率的な物流管理のために高いスキルを持つ人材を求めています。特にアジア地域では経済成長が顕著で、物流の需要が急増しているため、日本の企業もその動向を注視しています。

例えば、中国やインドでは急速に経済が発展しており、それに伴い物流インフラの整備が進んでいます。これにより、国際物流管理士の需要が急増している状況です。近年では、eコマースの急成長もあり、輸入・輸出業務の効率化が必須となっています。

このため、国際物流管理士のスキルセットには、国際貿易・運輸業の知識だけでなく、地域ごとの規制や法規の理解が重要となってきています。この知識があることで、トラブルを未然に防ぎ、迅速かつ効率的に業務を遂行することができます。

4.1.2 新興市場の可能性

新興市場では、物流インフラの整備が急速に進行中で、国際物流管理士が果たす役割はさらに重要になっています。例えば、インドや東南アジア諸国は急速に経済発展をしており、物流業界はこうした地域での効率的なオペレーションを模索しています。

国際物流管理士が新興市場で成功するためには、現地のビジネス習慣や文化への理解も欠かせません。例えば、物流業務の調整や交渉において、現地のパートナーとのコミュニケーションが円滑に進むことが重要です。また、このような市場では、最新技術の導入が進んでいるため、それに対応できる知識とスキルの習得も求められます。

例として、フィリピンではオンラインショッピングの普及により、倉庫管理や配送の効率化が急務となっています。これに対応するためにAI技術や自動化技術がどのように利用されているかを理解し、その運用方法を習得することが急務です。

4.2 最新技術と国際物流

4.2.1 デジタルトランスフォーメーション

物流業界ではデジタル技術の導入が進んでおり、国際物流管理士にとって最新のITスキルは必須となっています。企業はサプライチェーン全体をリアルタイムで管理できるシステムを導入し、効率的な運営を目指しています。これにより、物流のトラッキングや管理が大幅に改善され、迅速な対応が可能となっています。

例えば、物流の全プロセスをデジタル化することで、在庫管理や取引の透明性が向上します。IoTデバイスを利用したトラッキングシステムが導入されることで、貨物の位置情報をリアルタイムで把握し、遅延リスクを低減することができます。これにより、顧客満足度の向上にも寄与することができます。

また、ブロックチェーン技術の導入も注目されています。ブロックチェーンにより、取引の透明性が確保され、不正や改ざんのリスクが低減されます。これにより、国際取引における信頼性が向上し、よりスムーズな物流運用が可能となります。

4.2.2 AIと自動化の導入

AI技術と自動化の導入は、国際物流にも大きな影響を与えています。AIを活用することで、予測分析や最適ルートの算出が行われ、コスト削減や納期短縮が実現しています。

具体的には、AIを活用した需要予測により、在庫の最適化や配送ルートの最適化が可能となります。これにより、無駄なコストを削減し、納期の短縮が実現します。特に、気象データや交通データを利用した予測分析が有効です。

また、自動化技術により、倉庫管理や配送の効率が向上し、人的ミスの削減にも寄与しています。例えば、ロボティクスを用いた倉庫内作業の自動化が進んでおり、これによりピッキング作業の精度が向上し、出荷ミスが減少しています。また、無人搬送車(AGV)やドローンを利用することで、迅速かつ正確な配送が可能となり、物流の効率が大幅に改善されます。

これらの最新技術を駆使することで、国際物流管理士はより高度な専門性を発揮することができ、企業の競争力を高めることができます。

5. まとめ

国際物流管理士は国際貿易や物流に関する深い知識と実務経験を証明する重要な資格です。資格取得により、キャリアアップや転職の際に大きなアドバンテージを得ることができます。また、専門的なスキルを持つことで、業務の効率化や正確な配送管理が可能となり、企業に対する信頼性も向上します。さらに、グローバル化が進む現代において、国際物流の専門家としての需要はますます高まっています。最新の技術と連携し、持続可能な物流を実現するためのリーダーシップも期待されており、国際物流管理士の資格は今後さらに重要性を増していくでしょう。